財務3表一体理解法でSaaSを読み解く

SaaSは「安定したビジネスモデル」だと言われる。
月額課金で継続的に売上が積み上がり、スケールすれば利益率も高い。
しかし『新版 財務3表一体理解法』を読むと、SaaSこそ財務3表を一体で見なければ危険だと気づかされる。
今回は本書の考え方を、一般的なSaaSビジネスに当てはめて整理してみたい。
PLだけ見ると、SaaSは“優等生”に見える
まずPL(損益計算書)。
SaaSのPLには、次のような特徴がある。
- 月額・年額のサブスク売上が積み上がる
- 原価は比較的低く、限界利益率が高い
- 主なコストは人件費とマーケティング費用
- 規模が大きくなるほど利益率が改善する
PLだけを見ると、「売上も伸びているし、黒字化も見えている。順調だ」と判断してしまいがちだ。
だが本書が繰り返し強調するのは、PLは“結果”であって、“実態”ではないという点である。
SaaSの実態はBSに表れる
次にBS(貸借対照表)を見る。
SaaSでは、BSに次のような特徴が出やすい。
資産側で起きやすいこと
- 現金が思ったほど増えない
- 売掛金は比較的少ない(即時決済が多い)
- 自社開発ソフトウェアは資産に載りにくい
その結果、PLは良いのに、会社の体力は薄いという状態が起こりやすい。
負債・純資産側で起きやすいこと
- 開発や採用のための借入
- 純資産はまだ十分に積み上がっていない
- 利益は出始めたが、蓄積はこれから
重要なのは、PLの黒字は、すぐに財務の強さにはならないという現実だ。
成長すればするほどキャッシュが減る構造
『新版 財務3表一体理解法』の中で重要な概念に「回転」がある。
これをSaaSに当てはめると、こうなる。
- 人を採用する → 人件費が先に出る
- 機能開発に投資する → 売上化は数ヶ月先
- マーケ費を投下する → 回収はさらに先
つまり、成長=先行投資=キャッシュアウトという構造を持っている。
PL上では成長していても、BSの現金は減り続ける。
ここでCFを見ないと、致命的な判断ミスをする。
CFはSaaSの「生存指標」
CF(キャッシュフロー計算書)は、SaaSの健全性を最も正直に映す。
営業CF:SaaSの生命線
- サブスク収益が安定して入ってくるか
- チャーンを抑えられているか
- 人件費増加を営業CFで吸収できているか
営業CFが安定してプラスであるか。
これが、SaaSが「自走できているか」の分かれ目になる。
投資CF:未来への選択
- プロダクト改善
- 新機能開発
- インフラ・セキュリティ投資
投資CFがマイナスであること自体は、健全な成長企業の証拠でもある。
問題なのは、
- 営業CFが弱いまま投資が続いている
- 投資と売上成長の因果関係が見えない
ケースだ。
財務CF:時間を買っているのか、延命か
- 借入や資金調達で時間を確保しているか
- それとも構造的な赤字を埋めているだけか
SaaS経営では、「いつ営業CFだけで回るか」を常に意識する必要がある。
財務3表を一体で見ると、経営判断が変わる
3表を一体で見ると、次の問いに答えられる。
- この成長は本当に健全か
- 投資スピードは体力に見合っているか
- このSaaSは自走フェーズに入ったか
これは単なる会計の話ではなく、経営判断そのものである。
まとめ:SaaSこそ「一体理解」が必須
『新版 財務3表一体理解法』の学びをSaaSに当てはめると、結論は明確だ。
SaaSはPLで夢を見て、BSで現実を知り、CFで生き残る
財務3表は、数字の集合ではない。
プロダクトと事業の生き様を写した結果だ。
SaaSを作る人・運営する人にとって、財務3表を一体で読む力は武器になる。






